おしらせ

2024/04/15

施設ブログ

はちす苑

17年間 生活されていたS様の看取り

平成18年9月に入所され、長年はちす苑に入居されていたS様の看取りを行った。はちす苑に入所されて約17年6ヶ月、このような長い期間、特養で生活される方と出会える機会はほとんどないであろう。生活されていたユニットもほぼ変わらず、居室もほぼ同じお部屋。また、ご自身で🐶(チップ)を飼っており、10年以上チップと生活をされてきた。

17年以上入居されていたのでエピソードは山ほど・・・。ご家族とは疎遠で、生活保護の方であったため、ご家族からの協力や生活における金銭面においては大きな制約があった。でも、本人はそれでも、〇〇へ行きたい、〇〇が食べたいなどの希望はあり、日常生活、病気、嗜好品、いろいろなことで何度も職員と喧嘩もしてきた。歴代の主任や担当職員は大変であったと思うが、ある意味、本音を出し合うことで関係を築くことができていた。それを感じることができたのが、異動・退職した職員が本人の面会に来たり、施設内で行った葬儀の際に参列した職員の顔ぶれである。振り返ると、いい意味で「振り回された。それが良い思い出となっている」というのが、職員の正直な気持ちというところか。また、お酒が大好きな方で、沖縄に行った職員が、泡盛のゼリーをお土産で購入、この時期ほとんど口からの食事ができない状況であったが、このゼリーだけは、むせずに美味しそうに召し上がっていた。

今回の看取りで(おそらくご本人からの署名は初めて)、書類にご本人から署名をいただいた。17年間築き上げた関係とご本人に「最後」に関する考えをきちんと聞いていたことが大きい。署名できる時期にご本人に最終確認し、直筆でいただくことができた。それと同時に職員は「チップと常に一緒に過ごせるように」と、ご本人に「居室外の場所で生活することになるけど宜しいですか」と確認し、ユニット内のスペースに居住空間を設けた。

ケアプラン「総合的な援助の方針」に記載されていた「チップを看取る」という思いは果たすことができなかったが、もう一つの思い「遺骨を主人と思い出の海に散骨してほしい」は、職員・葬儀会社の協力を得て果たすことができた。特に葬儀会社の方には尽力していただいた。事前にS様の思いを伝えていたこともあり、僧侶・散骨用の遺骨の準備、永代供養のお寺の手配など、本当に助かった。

令和6年4月2日 有志の職員で、ご本人の希望であった思い出の千葉県某海岸に骨壺に大好きなお酒を浸し散骨をさせていただいた。17年間至らぬことが多々ありましたが、S様からの気遣いやさしさ、いろいろな思い出をいただけたことに感謝しています。