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全世代・全対象型地域包括支援体制

2015年11月16日

軽度の認知症の80歳代の母親が、無職で精神疾患を患っている50歳代の子と同居している世帯への支援が必要となった。地域包括支援センターと障害者相談支援事業所がそれぞれ対応することになった。このような、分野をまたがる課題が絡み合って複雑化したり、世帯単位で複数分野の課題を抱える状況が地域内で生まれている。

思えば、2004年に創設された千葉県独自の「中核地域生活支援センター」構想も同様の問題意識があった。しかしその後の地域における相談支援に関わる制度の変化(地域包括支援センターの発足、障害者自立支援法の施行)により、相談窓口の整備が進み、「中核」の意義はやや薄らいだ。それは何より「地域」の概念が「中核」におけるそれとは決定的に違っていたことが大きかった。それでも「中核」の提起した未解決問題が残っていた。
かねてより、「地域包括ケア」と言いながら、なぜそれが高齢者のみを対象とするシステムなのか。研究者などは、“理念的には”とか“将来的には”としながら、それは地域にある福祉ニーズ全般を対象とすべき、と言っているのは聞いていた。どうやら毎度批判されてはいるものの日本の社会、特に役所にありがちなあの「縦割り」というセクショナリズムが、あるべき姿への接近を阻む壁になっていたと思わざるを得ない。いやな言葉だが“たらい回し”にされたり、さまざまな専門職のいる機関をあちこち何度も訪ね、支援を依頼するのが常だった。

このほどその素朴な疑問への答えが、やっと出てきた。地域における「福祉の窓口」がひとつになる―簡単にいうとこういう構想である。発信源は厚生労働省。高齢者、障害者、児童、生活困窮者、これらの人々の福祉を担当する部局の関係者が、制度横断的な「新たな地域包括支援体制」の構築に向けてプロジェクトチームを立ち上げ、構想を発表した。新しい制度なり施策が打ち出される場合、こうした官僚からの提案という形は、かつて、介護保険制度の基本設計を提示した「高齢者介護・自立支援システム研究会報告」(1994年12月)、障害者保健福祉施策に関する「改革のグランドデザイン」提示(2004年10月)の例が記憶にある。今回は社会福祉法人改革法案の成立が見込まれるタイミングで登場している。福祉施策の目玉が「次はこれだ」ということだろう。

9月17日に報道発表され公開された資料は、「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現―新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン―」というタイトルがつけられている。

高齢、障害、児童、生活困窮などの課題を、地域全体で支える力を再構築することが求められ、これまでのように各分野ごとに相談・支援を提供しても、必ずしも十分ではなかった。新たな体制のもとでは、「対象者の状況に応じて、分野を問わず包括的に相談・支援を行うことを可能にする」と言っている。
冒頭のケースは、新しい地域包括支援のもとではこう運ばれるという。

コーディネーターが、精神保健福祉センター、障害者相談支援事業所と連携し自立支援医療による継続した医療を受診できるよう環境整備を図り、症状が安定した後に就労継続支援事業による就労・社会参加につなげるとともに、母親については地域包括支援センターと連携して、介護予防・日常生活総合支援事業による通いの場につなげつつ、見守りや配食などの生活支援を開始し、包括的支援を実施。地域の民生委員と連携して見守り支援に繋げる。

2013年7月より取り組んできた当法人の「総合相談」(地域包括+障害者相談支援事業所アシスト)が実を結びそうである。

(法澤 奉典・のりざわ とものり)

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