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それは果たして指導?それともパワハラ?

2018年12月17日

 「叱責・指導」と「いじめ・嫌がらせ」の境界はどこにあるのか。業務上の上司と部下のやりとりは、「人材育成」として容認されるケース、「パワハラ」と非難されるケース、そのどちらもありうるのである。

 この問題、昨今わが国のあらゆる職場を悩ませており、われわれも例外ではない。

 私には、昔からあった問題のようにも、近頃特有の現象にも、そのどちらにも思える。

 職場の人間関係に起因する葛藤は、時に人の運命を変える愛憎ドラマとして描かれる。あの「倍返し」は、うっ積したサラリーマンの心情を代弁してくれたドラマだから高視聴率となった。しかし現実はそうはいかない。

 上司からのパワハラによって人格を傷つけられ、うつ病を発症したり、中には自殺にまで追い込まれる悲惨な事例さえある。

 われわれの職場でも先頃、管理職を対象にパワハラ防止研修を行った。受講者の一人はこう感想を書いている。

<以前の職場で、ノルマが達成できないと、「達成するまで帰ってくるな」「この数字でよく帰ってこれたな」など上司から言われた。(しかし)当時は耐性ができており、右から左に流すことができていた>

 この短い記述から、ある上司と部下のやりとりが、パワハラとして認識されるか否かの分かれ目をみるような思いがする。それは、する側の態度、される側の受けとめ方、あるいは両者の日常的な関係、それぞれのキャラクターによって、あるいはブラック企業と呼ばれるような組織かどうかで、問題の表れ方に違いが出るように思う。

 労災認定レベルのパワハラとはこうだ。

<膝のけがが悪化し、入院して手術することになった際も「お前、以前も休んだよな」。会社を訴えた場合は「それなりの対応をするから覚悟しとけよ」と言われ、再びドライバーからの配置転換を迫られ……その後ドライバーに復帰したが、12月のお歳暮の時期に入り残業が増えるにつれ、体調も悪化していった……不眠や不安が続き、、楽しみにしていたクリスマスコンサートに行っても車から出ることができず、帰宅したことも/仕事中に決められた時間内に事業所に帰らないと上司から「何してるんだ?」と電話があるため、がむしゃらに働いていたが、家に帰るとイライラしたり急にふさぎ込むことが多くなっていた>(12/5、YAHOOニュース)

 このケースではパワハラに加えて過重労働問題も含まれている。上司の嫌がらせもその人の個性から発したものというより、非効率を徹底して排除するといった会社の体質によるものであろう。

<働き手の3割超が過去3年間にパワハラ被害の経験を持つ。17年度に全国の労働局が受けた労働相談で、「いじめ・嫌がらせ」は7万2000件を超え、6年連続トップだった。パワハラによる精神障害の労災認定も88件に上る>(11/25、読売新聞社説)

 国は来年の通常国会に関連法案の提出を目指し、企業にパワハラの防止措置を義務づける方針だという。

 「パワハラとは、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えることを指す」(12/3、毎日新聞)というのが一応の定義だ。

 だが具体的な事案を前にすれば、それが「業務の適正な範囲」を越えているか否かについては、訴えた側と訴えられた側の言い分が対立するのは目に見えている。その前に、声を上げることもできず、一人でストレスを抱え込む人のことも考えておくべきだ。

 われわれはとりあえず相談窓口の整備に取り組む。国がどのようなガイドラインを示すかにも関心を払いたい。

(法澤 奉典・のりざわ とものり)

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