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この姿勢から何を学ぶか

2018年10月24日

「施設内虐待事件」

「職員を解雇」

 こんな刺激的なフレーズが目に飛び込んできた。福祉施設の広報紙としては異例の記事と言っていい。しかもよく知っている近隣の「あの施設で」となるとその衝撃はひときわ大きい。理事長の声明のスタイルで書かれている記事によると、事件の概要と法人の対応の要点は次のとおりである。

認知症のある特養入所者から

「A職員から暴行を受けた」

との訴えがあった。事実関係を当該職員に質したところ、そのような疑いを否定した。しかし被害を訴えた入所者の顔面に暴行の痕跡(あざ)が認められたので、A職員に対して自宅待機を命じた。事件翌日、理事長、施設長、事務長が協議し職員による入所者虐待行為と認定し監督機関(県・町)に報告。その翌日、A職員に対して法人は諭旨解雇処分を言い渡した。

事件の発生原因。

①虐待防止意識のない職員の存在を把握できなかったこと、②介護現場への「人の眼」が不足していたこと、③虐待=犯罪行為という認識が職員全体に欠けていたこと、の3点が挙げられている。

なお、再発防止のための方策についても述べられているがここでは省略する。

まずは不祥事を公表した組織のトップの姿勢に敬意を表する。組織内の“不都合な情報”の発信には消極的になりがちだ。関係者に向けるだけでなく、このような形で公表に踏み切る決断は重い。社会福祉法人の公共性、公益性の自覚があればこそ、であろう。

ただ対応として、虐待の事実を当該職員が否定している状況で「認定」されていること、刑事事件としての被害届は必要ではなかったのかということ、また諭旨解雇処分決定の手続きに理事会等の関与があってしかるべきではなかったかといった点に疑問は残る。

実は、この件と相前後して、やはり隣接する地域にある障害者施設において、職員による女性入所者に対する性的虐待事件があった。こちらは警察への被害届がきっかけで職員は逮捕され、メディアでも取り上げられた。しかしこちらの社会福祉法人からの発信は届いていない。好対照の対応姿勢である。

組織内でのコンプライアンス(法令遵守)義務違反行為にどう対応するか。虐待防止法や差別解消法施行後、福祉施設関係者としてはますます神経過敏とならざるを得ない昨今である。法人内ルールで制裁を加えるにしても、判断基準や処罰の程度はより厳しくなっている。どこまで情報発信すべきかも悩むところだ。

以前、事案に対する過大評価と過小評価という観点から書いた(2017年2月、№155)。組織内で起こった不祥事案(違法行為、苦情や公益通報による訴え・告発等)に対して、事実認定の後、事案をどう評価するかの決断を迫られる。それによってペナルティをどの程度にするか。そして、どの範囲に情報発信すべきか…と。

自らの使命を自覚するなら、それがサービスの質や職業倫理に照らして、地域社会からの信用を損ないかねない行為であれば、事実を明らかにし、法人としての姿勢を示すのをためらってはなるまい。ただ他方で人材あっての仕事であるからと、リスクやストレスを職員にあまり負わせたくないという意識もはたらく。

しかしいまや社会福祉法人は善意の持ち主の集団であるから、という甘え(言い訳)は通用すまい。組織を守るつもりが逆に仇になる例をさんざん見ているはずだ。

要は、どこを向いて社会福祉法人の経営にあたっているかという認識に立って、具体的事実の前で態度表明をすべきである。

(法澤 奉典・のりざわ とものり)

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