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「平成の愛光」を振り返る(2)

2019年3月16日

 私は平成元(1989)年の晩秋に北欧を旅している。「ノーマライゼーションの現実を検証する」というテーマを掲げた研修ツアーだった。「収容・雑居」のわが国に比べて、北欧3国の障害者福祉は、まるで夢を見ているような印象を受けて帰国したものだった。その1989年11月といえば、東西ベルリンを隔てていた壁が壊された時期でもあった。

平成最初の年の思い出だ。

■ガバナンス

 さて、「平成の愛光」を振り返るシリーズの2回目は「ガバナンス」について考えてみたい。

 福祉施設を経営する社会福祉法人には同族経営が多い。トップ(理事長)の親族が施設長や事務長など主要なポストを占め、もちろんそれは“相続”される。

 それに加えて、いわゆる「天下り人事」と「ワンマン経営」を合わせて、私は“福祉業界の三悪”と思ってきた。これらがこの業界の自立を遅らせてきた元凶と言っても過言ではあるまい。

 社会福祉法人が民間企業とは違うことは世間にも理解されていると思う。私財を提供して立ち上げられた法人であろうと、最終的にはその財産は国庫に帰属することになっている。にもかかわらず、まるでファミリー企業のごとく経営されている例は多い。

 平成28(2016)年に成立した改正社会福祉法の目玉は社会福祉法人制度改革だった。その改正案のたたき台として、旧制度の問題点を指摘したのが「社会福祉法人制度の見直しについて」と題する報告書だった(平成26年7月)。その中で「社会福祉法人の抱える問題点」として挙げられている1項目が「ガバナンスの欠如」であり、それは「家業型経営」と「オーナー型経営」の弊害だとされた。

 改正法はその「患部」にメスが入れられたとはいえない不十分な改革だった。特に世襲を法律で禁止することは難しいだろうし、政治の世界同様、社会福祉法人自身の自主性や強化された評議員会の役割に期待しているのだろう。

 しかし私物化や専断(勝手に決めること)の果てに破たんに追い込まれる事例の多くは、残念ながら世襲やワンマン型の組織に多い。合意形成の仕組みや統制のとれた組織を志向すれば、そのような経営スタイルはリスクが大きすぎる。

 お手本としては、わが子はおろか親族を一切自分の立ち上げた会社に入れなかったという本田総一郎の逸話があり、悪い見本は昨今話題になっているカリスマ経営者の犯罪が想起される。

 愛光がここまで成長してこれた理由も、“血脈のしがらみ”やトップダウンとは縁が薄かったことによると思う。それはこうも言える。法人立ち上げ直後には強烈なリーダーシップも必要であるが、円熟期に入っている組織だと、それがここでいう「ガバナンスの欠如」に結びつきかねないということである。平成の愛光は偶然も作用して、時代の求める経営スタイルをとることができたのである。

 入所施設中心の「昭和の愛光」に比べると事業や職員の変化を見て、「規模の拡大」ばかりに目が向かいがちである。しかしこの法人が長期的に継続していける経営基盤(主に組織や人事制度)を、未だ脆弱(ぜいじゃく=もろいこと)な面はあるが、築くことができた点を評価したいと思う。

(以下次号につづく)

 

(法澤 奉典・のりざわ とものり)

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